ゲーム理論は、社会や自然界における複数主体が関わる意思決定の問題や行動の相互依存的状況を数学的なモデルを用いて研究する学問です。
ゲーム理論は、経済学、政治学、心理学、社会学、生物学などの分野で広く応用されています。
そんな重要理論を学ぶためのおすすめの本と講義を紹介します。
経済学研究者がおすすめしている本を揃えました。
これであなたもゲーム理論マスターです(これらの本を読んで理解して現実社会で活用できれば)。
1 ゲーム理論の入門書3冊
ゲーム理論がおもしろそうと思われた方は、まず以下の2冊をチラ見してみよう。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
東大教授の松井さんが『経済学を味わう』の中で、2冊の入門書を紹介しています。
以下(1)と(2)がその2冊です。
(1) 梶井厚志『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』(中公新書、2002年)
276ページ。
ウィットに富んだ語り口でゲーム理論の考え方のエッセンスを伝えてくれる。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
(2) 松井彰彦『高校生からのゲーム理論』(ちくまプリマー新書、2010年)
175ページ。
著者の松井さんが自らの著書をこう評しています。
僕の本。我田引水だが、読みやすいと自負している。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
短い本でサッと読みたい人は、(1)ではなく(2)でしょう。100ページ短いから。
(3) 渡辺隆裕『ビジュアル ゲーム理論』 (日経文庫、2019年)
184ページ。
定番テキスト『ゼミナールゲーム理論入門』(2008年刊)の著者が、入門の入門として執筆したロングセラーになった『図解雑学ゲーム理論』(ナツメ社、2004年刊)を全面的に改訂してビジュアルシリーズに収めるもの。
Amazon商品案内より
この本は、「はじめよう経済学」の講義を無料提供されている加藤さんがおすすめされています。
ゲーム理論入門 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
2 ゲーム理論を勉強するための教科書2冊
入門本だとさすがに浅い。
学者の本でしっかりとゲーム理論を学びたい。
そんな人のおすすめのゲーム理論の教科書2冊。
(1) 岡田章「ゲーム理論』(有斐閣、第3版、2021年)
608ページ。
『経済学を味わう』の中で東大教授の松井さんが以下のとおりこの本をおすすめしています。
研究者が学んできたゲーム理論に触れたいという方には、以下をオススメしたい。英語のテキストブックにも引けを取らないゲーム理論のクラシックなテキストだ。これを読みこなせれば、あなたもゲーム理論家になれるかも。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
(2) 渡辺隆裕『ゼミナールゲーム理論入門』(日本経済新聞出版、2008年)
500ページ。
「はじめよう経済学」の加藤さんに以下のとおり勧められています。
ゲーム理論を着実に学ぶにはこの本がおすすめです。寝転がりながら読めるほど簡単な内容ではありませんが、経済学部の大学生が大学4年間で学ぶゲーム理論の内容を網羅しています。
ゲーム理論入門 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
よくある「”入門”と書かれているのに全然入門じゃない!」本の1つ、と思ったのですが、分厚い内容でもわかりやすく書かれています。
最初からしっかりした本で学ぶぞ!という人は前記の所学者本ではなくこの本から始めてもよいと思います。
なお、この本の著者渡辺さんは、自身の東京都立大でのゲーム理論の講座をYoutubeで無料公開しています。
この『ゼミナールゲーム理論入門』を教科書としていますので、教科書と一緒に講義で深くゲーム理論を学べます。
3 ゲーム理論を経済学の教科書の中で学ぶ
ゲーム理論は、ミクロ経済学の1分野として取り上げられます。
ゲーム理論単体ではなく、ミクロ経済学の教科書の中でゲーム理論を学びたい人のおすすめのミクロ経済学の教科書は以下2冊です。
『経済学を味わう』の中で東大教授の松井さんがおすすめしています。
もう少し学びたいな、という人には下記の2冊を。どちらも大学生向けで、東大の教科書に使われたこともある。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
(1) 神取道宏『ミクロ経済学の力』(日本評論社、2014年)
東大駒場で評判ナンバーワン講義の書籍化だ
ー松井彰彦・東京大学大学院経済学研究科教授(市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ)
前述した経済学無料講座の「はじめよう経済学」を提供されている加藤さんは、この『ミクロ経済学の力』を初学者が初級レベルを学び終えた後の教材としておすすめしています。
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
おすすめの経済学の本 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
(2) 梶井厚志・松井彰彦『ミクロ経済学戦略的アプローチ』(日本評論社、2000年)
324ページ。
市場の話を、ゲーム理論を学びながら読み解いていく。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)21ページ
*****
経済学のおすすめ教科書についての詳細は以下記事をご覧ください。
経済学を合理的に独学するためのおすすめ入門本・講座 | 転職キャリアルール (career-rule.com)
4 ゲーム理論はここから始まった | フォン・ノイマンとモルゲンシュタインの『ゲームの理論と経済行動』
ゲーム理論をさらに極めたい人はゲーム理論の始まりの元始の書に挑戦してみましょう。
天才数学者であるジョン・フォン・ノイマンが経済学に首を突っ込んで一代業績を築き上げた領域です。
ゲーム理論は学問としては非常に若く、1944年にフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンが「ゲームの理論と経済行動』という著書を出版したところから始まったといわれている。もちろん、ゲーム理論的な考え方そのものは19世紀くらいからあったとされるが、それでも物理学などの自然科学の学問と比べるとずいぶん若い。
市村英彦=岡崎哲二=佐藤泰裕=松井彰彦(編)『経済学を味わう』(日本評論社、2020年4月)4ページ
「ゲームの理論と経済行動」の翻訳版は、以下2種類が出版されています。
(1) ゲームの理論と経済行動〈1〉-〈3〉 (ちくま学芸文庫)(2009年)
506ページ、448ページ、516ページ。
アマゾンのレビューによると、「東京図書から1972-73年に掛けて翻訳されたものの文庫」のようです。
(2) ゲーム理論と経済行動: 刊行60周年記念版(2014年)
988ページ。
本書は、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンが1944年に刊行した『ゲーム理論と経済行動』の刊行60周年記念版として、2004年に刊行されたものの翻訳である。ゲーム理論の専門家が新たに訳し直したものであり、原書刊行時の経緯から、当時の貴重な書評を含む読み応えのあるものとなっている。
Amazonの商品紹介より
ページ数もすごいが値段もすごい。
5 ゲーム理論の発展・応用ー行動ゲーム理論
基礎的なゲーム理論を学んだらそれをベースにさらなる学びに進みましょう。
川越敏司『行動ゲーム理論入門』(NTT出版、第2版、2020)
渡辺隆裕東京都立大学教授のゲーム理論講義の中で川越敏司『行動ゲーム理論入門』(NTT出版、2010)が紹介されています。
講義の中では渡辺先生は「日本には優れた行動ゲーム理論の本がある」と『行動ゲーム理論入門』に言及されています。
なお、現在は2020年出版の第2版が出ています。
小林佳世子『最後通牒ゲームの謎 進化心理学からみた行動ゲーム理論入門』(日本評論社、2021年6月)
行動ゲーム理論の日本語の本は少ないところ、この本は面白そうな本です。
日本評論社のYoutubeでの紹介もあります。
6 ゲーム理論の講義【無料】
ゲーム理論を勉強するにあたり、動画の講義も利用できます。
初学者には本よりも講義の方がとっつきやすいでしょう。
(1) はじめよう経済学
本記事でおすすめ本を紹介するために何度も引用させてもらっている加藤さんの「はじめよう経済学」という無料講座の中でもゲーム理論は解説されています。
とてもわかりやすい説明です。
ゲーム理論入門 | Econ.@YouTube (introduction-to-economics.jp)
(2) 草川孝夫「ゲーム理論入門2022」(高知工科大学)
『ゲーム理論入門2022』全14回 @ 高知工科大学 – YouTube
この講座は、1時間超の全14回の講義が無料で受けられます。
動画でしっかり学びたい人におすすめです。
動画を公開してくださってありがとうございます。
(3) 渡辺隆裕(東京都立大学教授)ゲーム理論講義
この動画講義はもっとすごい。
なんと全50回の講義が公開されています。
しかも講義をするのは、前述したおすすめのゲーム理論の教科書である『ゼミナールゲーム理論入門』(日本経済新聞出版、2008年)の著者の渡辺隆裕東京都立大教授です。
『ゼミナールゲーム理論入門』を教科書とする講義です。
こんな充実した講義を公開してくださってありがとうございます。