会計の世界史 書評・レビュー

会計の世界史 書評・レビュー

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 (日本経済新聞出版)

会計の複雑な話や数字はほぼ出てきません。世界史の各場面の物語を読む感じです。読みやすいです。世界史の本の中に会計の話が織り込まれています。

会計さっぱりわからん、知識ゼロ、世界史興味ある、という人にはとてもおすすめです。簿記の勉強もおすすめですが、社会人で教養の一つとして会計の成り立ちの小話を知っておく、という読み方をするのにうってつけです。

読みやすさと会計の知識説明の少なさ(これは褒め言葉です)から、会計の超初心者向け書籍としてもいい本です。

「世界史に全く興味がない」という人にはおすすめできません。この点は注意が必要です。

世界史の中でも、レオナルド・ダ・ヴィンチ以降のヨーロッパ、アメリカ史がほとんどです。

もっとも、「世界史」の説明本ではなく、人物や会社等でイベントの切り分けがありますので、世界史の教科書を読むよりはるかに読みやすいです。世界史に苦痛を感じる方でなければ受け入れられる内容です。

読みやすさをの源泉は、言い切り・断定型の物語形式です。「~であったようです」といった伝聞型ではなく、「~だった」と断定調で書かれ、歯切れがよいのです。物語式はそうでないと物足りません。紙芝居が「~ということらしいです」みたいなしゃべりだったらつまらなくなります。著者もあとがきで、見てきたかのように書いてあり、誤りがあったらすみません、と説明しています。この本は歴史的正確性を重視する本ではないので、そうした細かい点を指摘したい人も読まない方がいいかもしれません。

内容としては、減価償却は設備投資負担の大きい鉄道会社で誕生した、バランスシートの右下を制するのが重要だ(マイケル・ジャクソンvsポール・マッカートニー)、16世紀・17世紀頃の東インド会社とオランダ隆盛、などなどとても興味深く面白い内容でした。

レオナルド・ダ・ヴィンチの父親が公証人だった、イタリアの公証人は社会的地位が高い、といった会計に関係ない話もおもしろかったです。ヨーロッパの公証人(notary)は、ヨーロッパの法的取引で頻出なので、自分の実務経験からしても興味深く読めました。

簿記等で会計知識がある方でも会計の成り立ち・歴史は勉強していないと思いますので、読むと知的バックグラウンドになって得るものはあると思います。

読みやすく面白い本ですので、多くの読者層にお勧めできる本です。

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

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