サラリーマンの資産運用に株式投資がおすすめなのはなぜか

サラリーマン 投資

サラリーマンは投資をすべきです。特に株式投資をすべき。

将来のお金に不安がない人は投資は不要ですが、そうした人は少ないはずです。

投資はした方が良さそうだけど、なんだかよくわからないから動けないでいる。

投資は損しそうで怖いから踏み出せない。

こんな風に考えている会社員の方向けの記事です。

よくわからないものはこわい。資産が減る可能性があると余計こわい。

だから投資をしない。

この考えは自分の心理に正直な判断であり、間違いでありません。

しかし自分の資産運用方法としては合理的な考えではありません。

「株式投資は損をする可能性があるからこわい」は、自分の資産を増やせるアップサイドを無視しており、機会損失を一切考慮に入れない考えなのです。

目次

1 株式投資は損するから恐い!はしょうがない?

投資 恐い

株式投資をしていない会社員の人の多くは、「金を払いたくない」「損したくない」という理由から株式投資を避けていると思われます。

この考え・心情は無理からぬものです。

しかし、この心理が人の合理的判断を妨げてしまいます。

(1) 今あるお金を失いたくない【保有効果】

株式投資は、自分のお金を支払って株式という資産を購入することで実行されます。

100万円の現金を差し出し、100万円相当の株式を手に入れます。

株式を買っても実は自分の資産は減りません。100万円の現金と株式を交換しているだけですので、自分の全財産のうちの一部が現金と株式とで入れ替わるだけです。

しかし、人は「自分のお金が株式に変わっただけ」とは思いません。

自分のお金が無くなった、財産が減ったとすら感じます。

人は今手元にある自分が保有しているものを過大に評価します。保有効果が働くからです。

何であれ「モノ」を保有するとそれに対して執着が生まれることがある。執着心が強くなると、執着の対象となるモノに対して、それを保有しなかった場合に比べて、実体よりも高い価値を見いだしてしまう。これは保有効果と呼ばれるバイアスである。保有効果があると、モノに対する保有権や執着(愛着)が大きな損失感を生まないように、非合理的な行動をとりがちである。

筒井義郎=佐々木俊一郎=山根承子=グレッグ・マルデワ『行動経済学入門』(東洋経済新報社、2017年5月)114ページ

今手持ちの現金を過大評価してしまうと、心理的に投資はしにくくなります。

投資とは、今あるお金を差し出して、将来のより大きな購買力を手に入れる行動です(ウォーレン・バフェットによる投資の定義)。

将来手に入るかもしれないより多くの資産よりも、今持っている物を高く評価してしまうのが保有効果ですから、現金を投資に回すのをためらうのは心理的にしょうがない面があるのです。

会社員であれば、給料の一部を積立投資に回すことでその分損しているように感じてしまう。

毎月の給料は、食料品や夜のデート、ワイン頒布会の会費など、使い道がたくさんある。給料の一部を積み立てるのは、こうしたものごとをあきらめることのように感じられる

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)156ページ

(2) 株式投資で損をしたくない【損失回避】

株式投資をしたくないもう1つの理由が「損をしたくない」というものです。

100%の人がこう思っています。

しかし、この思いは必ずしも合理判断に役立つわけではありません。

ア 人は損失を利得よりも大きく評価する

人の判断の傾向として、損失回避という考え方が備わっています。

損失回避とは、人は心理的に利益よりも損失に重きを置くという考え方のことです(ダロン・アセモグル/デヴィッド・レイブソン/ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月))。

50%の確率で儲かるかもしれないが、50%の確率で損するかもしれない、というゲームであれば、多くの人は辞めておこうと考えます。

60%儲かる、40%損する、でも多くの人は勝負を避けます。

儲かる喜びよりも、失敗の悲しみの方がインパクトが大きいように人は思うのです。

さまざまな状況において、何かを得ることで幸せになる度合いは、同じ物を失うことで不幸せになる度合いの半分程度でしかないらしい

リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)141ページ

損失回避の法則は、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが初めて提唱した概念で、利益を得るときと損失を被るときとで、価値の評価が異なることをいう。私たちは損失の痛みを、同等の利益を得る喜びよりも強く感じる。しかもちょっとしたちがいではなく、2倍ほども強く感じるのだ。10ドルの損失の痛みは、10ドルの利益の喜びの2倍の強さで感じられる。感情的なインパクトを同じにするなら、10ドル失った痛みを帳消しにするには、20ドル獲得する必要がある。

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)155ページ

この考えは人間は誰しも持っている傾向なので、受け入れるしかありません。

しかし、大切なことは、損失回避の考えを頭から消し去ることはできないものの、損失回避の考えに染まりきって判断をなんとなくしてはいけないということです。

損失回避の概念は、判断において極めて重要なものです。

損失回避というコンセプトは、心理学から行動経済学への貢献の中でおそらくは最も重要なものだろう。

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー 下』(早川書房、2012年11月)102ページ

イ 株式投資はハイリスク資産クラスである

投資対象となる資産は、株式、債券、不動産、金とたくさんあります。

その中で株式投資は「ハイリスク」の部類に入ります。

ここでいう「ハイリスク」とは、「とても危ない」という意味ではありません。

資産価値が激しく上下しがちであるという意味です。

株式投資は、大きなリターンが望めるのと同時に、大きな下落もよくあるのが特徴的な資産です。

株式投資に比べると、国債等の債券は、ローリスクの資産と位置付けられます。

あまり上がりもしなければ下がりもしないというのがローリスクということです。

ウ ハイリスク投資となる株式投資を避けたくなるのは無理もない

株式は投資対象として上昇可能性も下落可能性も高く、下落可能性も当然高いのは否定できない事実です。

人は、上昇可能性よりも下落可能性の方に着目してしまいます。

「大きく儲かる可能性がある!」よりも「大きく下落する可能性がある・・!!」の方に注意が行ってしまうのです。

(3) 保有効果と損失回避の絶妙な心理ハーモニーによって投資を忌避する

前記の保有効果と損失回避の心理の合わせ技は強力であり、多くの人を投資から遠ざけます。

損失回避は授かり効果(※保有効果)とともに作用する。自分の所有するものを手放したくないのは、それを過大評価しているためでもあり、過大評価するのはそれを手放したくないからでもある。

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)155ページ

これらの心理に染まりすぎて感情に従って投資を避けようとするあまり、投資のことをよく知らないのに「怪しい」とか「ギャンブル」とレッテルを貼ってしまいます。

これは不合理な行動です。

いかに不合理かは次の項目で説明します。

2 株式投資をしないことで巨額の機会損失を被る

投資 機会費用

株式は前述のとおりハイリスク資産です。

ハイリスクということは、大きく下落する可能性もあれば、大きく上昇する可能性もあります。

株式投資をしないという判断をしがちなのは、下落可能性ばかり見てしまい、上昇可能性を考慮しないことにあります。

それによって自分の資金の置き場所(投資先)の判断を合理的にできなくなってしまうのです。

(1) 損を避けたい自分の感情だけを頼りに判断するのは賢明ではない

損失回避のせいで、潜在的な利益よりも潜在的な損失のほうがずっと重く感じられる。冷血な経済学的観点からすれば、これはまったく意味をなさないことだ。損失と利益は、同等で逆の経済的効果をおよぼすものと見なさなくてはならない。私たちは冷血な巨大スーパーコンピュータとして、効用だけをもとに決定を下すべきだ。

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)155ページ

投資判断は、利得の大きさによって決めるべきです。

今差し出す資産(現金)と、将来得られる資産とを比べて、将来得られる資産が大きければ投資をするのが合理的です。

もっとも下落可能性があるので、将来得られる資産は確実に大きくなるわけではなく、期待値になります。

「投資は危ない」と考える人の多くは、将来の期待値を低く見積もります。なぜなら、下落することに過大な力点を置いて見ているからです。

しかし、この見方は片面的な見方です。物事の片方しか見ていません。

株式投資は、下落する可能性もありますが、上昇する可能性もあります。

下落可能性も上昇可能性も等しく見なければ正しい評価はできません。

上昇可能性を考慮に入れないということは、機会損失という将来の損失を無視していることになります。

(2) 機会損失(機会費用)を考えよ

投資をすればお金が減ってしまう!という考えにとりつかれている人は、機会費用を考えることができておらず、不合理な思考にとらわれてしまっています。

自分の利得を最大化しようとするのであれば、機会費用も損失として考えなければなりません。

機会費用は、ある一連の行動を行うことによって、次善の行動を行ったときの利益を失うことから生じる費用と定義される。

リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)129ページ

たとえば、高校生が大学に進学すれば、高校卒業後に就職して給料を得る機会を失います。

就職する機会だけでなく、世界を放浪する機会やプロスポーツ選手になる機会も失うのですが、数ある失う機会のうち、最善の選択肢を費用と考えるのです。

機会費用とは、ある行動をとった時に、その行動ゆえに断念せざるを得なかった代替的な行動(お金を支払うことや受け取るという行動を含む)の中で最も価値の高いものの価値のことである。

筒井義郎=佐々木俊一郎=山根承子=グレッグ・マルデワ『行動経済学入門』(東洋経済新報社、2017年5月)117ページ

最高の判断をするには、機会費用を考えなければなりません。

経済学は意思決定に関する学問ですが、経済学において機会費用は超重要な思考ツールです。

経済学の原理に最適化というものがあります。

最適化(optimization)とは、利用しうる情報をもとにして、実現可能な最善の選択肢を選ばうとすることである。
最適化とは、人は実現可能な選択肢の長所と短所のすべてを、意識的または無意識に天秤にかけて、最善の選択肢を選ぶという考え方だ。言い換えると、人は便益と費用の計算に基づいて選択を行う。
最適化は、経済学の第1の原理だ。経済学では、私たちの選択のほとんどは最適化で説明できると考えている。これには、映画に誘われて、行くかどうかという小さな決断から、誰と結婚するかといった大きな決断まで含まれる。

ダロン・アセモグル/デヴィッド・レイブソン/ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)10ページ

人は、誰もが最高の意思決定をしたい、最善の選択肢を取りたいと思っています。人は常に最適化を図ろうとしています。

最適化を図るには、現実世界では機会費用を考えなければなりません。人は神様ではありませんので、全てを手に入れることはできません。ぐっすり寝ながらおいしいごはんを食べるなんてことはできないのです。何かを手に入れるためには何かを捨てなければならないというトレードオフの関係に常に直面しているのであり、最適化には機会費用の概念を考慮する必要があるのです。

何をするにせよ、最適化のためには、つねに機会費用を念頭に置く必要がある。要するに、最適化とは、限られた資源の別の使用法を常に考えることなのだ。

ダロン・アセモグル/デヴィッド・レイブソン/ジョン・リスト『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)14ページ

(3) 給料を銀行預金として眠らせているだけでは資産増大可能性を放棄していることになる

給料で株式投資をするべきか、貯金しておくべきか。

会社員であれば、毎月一定のお金が給料として入ってくるという経済特性があります。

よほど低賃金かつ浪費家でない限り、月1万円か月10万円か程度の差こそあれ、使われないお金が発生します。

そして、それを使ってしまってゼロにしなければ貯金として蓄積されます。

そうしたお金の使いみちを考えるにあたっては、「こわい・・」と考えて思考停止に陥るのはやめ、機会費用を考慮に入れるべきです。

機会費用とは、お金に関する決定を下すときに必ず考えなくてはならないことだ。今お金を使うという選択によって、どんなものごとをあきらめることになるのかを考える必要がある。なのにほとんどの人が機会費用を十分に、またはまったく考えない。これこそがお金に関する最大のあやまちであり、ほかの多くのまちがいの原因でもある。

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)26ページ

機会費用を考えずに投資に関する決定をするのは重大な誤りです。

投資に関する決定とは、「株式投資をしない」という消極的な決定も含まれます。

ほとんどの人が「機会費用を考えない」という「お金に関する最大のあやまち」を犯してしまうとはどういうことでしょうか。

それは、株式投資をしないということで、「株式投資をすることによって得られる資産増大可能性を放棄する」という大きな機会費用を知らぬ間に被っているということです。

私たちはだいたいにおいて、お金のほかの使い道を十分意識していない。そして困ったことに、機会費用を考えずに下す決定は、自分の利益にならないことが多い。

ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)28ページ

会社員が機会費用を考えずに投資をしないということは、漫然と銀行口座に超低金利(年利0.001%)を置いておくことで、株式投資の期待リターン(何パーセントくらいかは難しいですが、年利5~10%くらいか)を複利で得られる機会損失を被るということを意味します。

個々人の資産額によりますが、数十年の会社員人生で一切株式投資をしないという機会費用を複利で計算すると巨額の損失になります。

お金を銀行に置いておくだけでなく、株式の形でもっていれば資産運用として断然お得になる可能性があるにもかかわらず、無知すぎてそのお得さを全く享受することなく時間が過ぎて老けていく、という恐ろしい事態が生じます。

嫉妬は自分を痛めつける感情であまり良くないものです。しかし、他の会社員が何十年とこつこつ投資をして資産を増やしている間、自分はずっと銀行口座にお金を置いて一切投資をしていなかったとしたら、かなりの差がつくことが考えられます。

3 投資のつもりがギャンブル(投機)とならないようにせよ

投資であれば何でもよいのか?

そんなことはありません。競馬は投資ではないです。

お金の使いみちは慎重にならなければなりません。

損したくないでしょ?

投資目的であれば暗号資産・仮想通貨なんて買ってはいけません。

では何が投資なのか。

投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。この条件を満たさない売買を、投機的行動であるという

ベンジャミン・グレアム『賢明なる投資家』(パンローリング、2000年)32ページ
ベンジャミン・グレアム
ベンジャミン・グレアム

ウォーレン・バフェットの師匠であり、詳細な分析に基づくファンダメンタル投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムは上記のように投資を定義しています。

投資とは、「詳細な分析に基づいたもの」でなければなりません。「なんとなくアップルとか米国株良さそうだから買おう」とか「高配当なら株価が下がっても配当たくさんもらえるから」といったぼわんとした理由の株式購入は詳細な分析に基づいたものではありません。

投資とは、「元本の安全性を守りつつ」行うものでなければなりません。元本を毀損してしまってやむなく退場、というような乗るかそるかの行為は投資ではありません。投資は危ないものであってはいけないのです。

投資とは、「適正な収益を得るような行動」です。1年でプラス50%や2倍、3倍を狙えるような投資は、「投資」ではありません。詐欺の可能性が高い。

こうした条件を満たさない”投資”は、グレアムの言う「投資」ではなく、ただの投機、すなわちギャンブルです。

「投資しなきゃ!」

こう思い立って、あれこれネットで調べて極端な投資をしないよう注意しましょう。

4 会社員に株式投資がおすすめな理由 | メリット

なぜ会社員は株式投資をすべきか。

そのメリットとは。

(1) 資産が効率よく増える

会社員が株式を中心とした投資をすれば、使わないお金の資産運用として効率的です。

ハイリスク資産であることを考慮しても、株式に投資をすることが数ある投資先の中で一番効率よく資産を蓄積できます。

投資対象はたくさんありますが、株式会社という資産の裏付けがあること、株式市場が整備されていること等を考えると、投資先として株式はすばらしい。

(2) 株式投資の副次的メリット(おまけ)

あくまでおまけですが、サラリーマンが株主投資をすることは資産運用以外にもメリットがあります。

ア 自分の経済的決定を自主的に判断できるようになる

自分の資産をどう運用するか、これを自分で決定できるようになり、自分の人生で主導権を握れるようになります。

会社の給料・退職金に頼りっきりでは、経済的自立なんて無理です。会社にすがるしかできない。

自分で投資判断ができ、資産を増やすことができれば、過度に会社に頼りっきりにならずにすみます。

イ 仕事・ビジネスに役立つ

投資判断とは、ビジネスで必要な判断です。

ビジネスは投資判断の連続です。お金を何かに費やし、より多くのリターンを狙う。会社のパソコンを買ったり、買収を決めたり、投資判断だらけなのです。

「誰か頭の良い人がやるんだろ」なんていう考えは優秀なビジネスパーソンは持ちません。

自分で考え、決める姿勢を持ちましょう。

機会費用を考えるのは、自分の投資判断だけでなくビジネスでも重要です。

慎重かつ賢明な投資判断は、仕事と仕事外の人生で役に立ちます。

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▼投資を始めるにはまずは資産配分を決める

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